御社の強みは?自慢できる点は何ですか?
「当社の自慢はクライアントです!」

これを自信持って言えるのは、人生で2回強烈に実感したからです。
私は大学卒業後(株)ヤナセに入社しセールスマンをやりました。友達が多いわけでも、車に詳しいわけでも、頭がいいわけでもないごく普通の私ですが、1年目は同期の中でセールスランキングが1位で新人賞を受賞し、2年目は東京のトップセールスになれました。この成果は意外で、何が他のセールスマンと違うのか、分析しました。

私が他のセールスマンと決定的に違う点が2点ありました。行動から人の本質を知る「洞察力」と、契約してくれるお客様が「自分に近い価値観」を持っている点です。

当時ヤナセでは車検や修理等があった場合、お客様がセールスマンに車を取りに来てもらい終わったら車庫に返しておいてという「引取納車」を懇願することが多くありました。会社はこれはセールスマンの仕事ではないと定義し、なるべくこれを受けない社員教育をしていました。しかし、自分から買ってくれたお客様とその後良好な関係を構築して代替えにつなげる営業方針なので、「引取納車」を受けざるを得ないセールスマンが多くいました。次第にお客様にとって当たり前になるので、ベテランセールスマンは「引取納車」で1日が終わってしまい有効な営業活動ができない人もいました。

私はというと「引取納車」を懇願するお客様がほとんどいませんでした。納車時にその後のサービス体制などを説明しますし、懇願されても八方美人にならず論理的に説明すれば分かって頂けるお客様がほとんどでした。何であの同期や先輩はいつも「引取納車」ばかりなのか不思議でしたが、分析の結果明らかに他のセールスマンと私は違いました。ちなみに私は自分の車を修理する際、セールスマンに取りに来て欲しいと思いません。自分の車なので自分で運転して持って行き、帰りは面倒ですが何十分も歩いたり、乗ったことないバスに乗ったり、そこで今まで見たことない視点で世の中を見てみるのも良い機会だと思います。もしかしたら、私から買ってくれたお客様も「自分に近い価値観」なのかもしれません。

不思議な現象ですが、同じ商品を扱い同じ社員教育を受けたセールスマンなのに、売れる車種にセールスマンごとの傾向が出ます。これも冒頭に挙げた「自分に近い価値観」が影響を及ぼしていると分析しています。私が配属された営業所ではドイツのオペルと、アメリカのキャデラックやシボレーと、スウェーデンのサーブなどを取扱っていました。簡単に線引きするとドイツ車とアメリカ車は車づくりの目指すところが違うので、購入するお客様層も明確に違いました。簡単に言えればサラリーマン層にオペルが支持され、経営者層にキャデラックが支持されました。

私はというとアメリカ車が得意でした。こういった傾向が出るのは不思議な現象ですね。ちなみに私はドイツ車も乗りましたが圧倒的にアメリカ車を乗りました。つまり「自分に近い価値観」でしかこういった傾向の説明がつかないと考えています。

まとめると「当社の自慢はクライアントです!」と1回目に強烈に実感したのはヤナセ時代です。
キャデラックを購入するような自由奔放な価値観で、何かを達成したお客様と共感しながら仕事でき、他のセールスマンのようにお客様のわがままに振り回されることなく営業活動に専念できたのでトップセールスになれました。今でも当時のお客様と交流がありお互いが有意義であると感じているのだと思います。

2回目は大きく方向転換しコンサルタントとしてのキャリアを歩み現在に至る過程においてです。現在に至る過程において会計税務のコンサルタントとして様々なタイプのクライアント先に放り込まれました。例えば私をリクルートスタッフィングみたいなただの派遣社員としか見てないクライアント、契約金額が異常に高額で期待値が半端なく神が来たと思っているクライアント、会計税務の実務をやったことがないのに責任者になってしまった人が担当のクライアント、前任者が辞めて前任者のファイルがどこにあるのかも分からないクライアント、悔しいけれど自分よりも良く知っている人ばかりのクライアント、契約金額めいいっぱい実務で絞りとってやろうと考えている関西系クライアント、様々体験しました。

三方良しという言葉がありますが、私の「洞察力」では上記に挙げたクラアイントは全て三方のうちどれかが欠けており、当社では積極的に契約したいと思いません。積極的になったところで契約に至らないと思います。クライアントも私も「自分に近い価値観」だと思わないからです。

サラリーマンの時はコンサルティングの営業マンをやりましたが、そこでもヤナセ時代と同じ傾向があり不思議な現象ではないことを確信しました。営業マンごとに契約してくれるクライアントの傾向が出てくるのです。ドイツ車が得意な、アメリカ車が得意な、というあの傾向です。コンサルティングでは、大手企業が得意なコンサルタント、中小企業が得意なコンサルタントや派遣が得意、コンサルティングが得意というような傾向です。結局「自分に近い価値観」であるか否かが契約できるか否かなんです。

私はというと、大手企業が得意でコンサルティングが得意でした。大手企業ヤナセで良い結果を出せたんですから、大手企業クライアントに対しても背伸びせずありのままでいれば、すんなり溶け込めました。なぜそれが可能かは「自分に近い価値観」をお互いが持っているからです。また「洞察力」があるとクライアントの現状分析・課題抽出に自信が持て、私の仮説がクライアントの仮説に近ければコンサルティングの契約にグッと近づけました。

「自分に近い価値観」のクライアントと仕事が出来るとどうなるか。お互いが有意義だと思っているので追加の発注をもらえます。関連会社のあそこに行ってもらえませんか?となり、そこには当社の新たなスタッフを追加でき当社が大きくなれます。頑張れば出来るでしょレベルのより高度な仕事は、当社に新たなナレッジが蓄積され仕事の幅が広がります。クレームや評判に頭を悩まされる事なく、いつも快適な環境で仕事ができます。

まとめると「当社の自慢はクライアントです!」と2回目に強烈に実感したのは現在進行形のコンサルタント時代です。「自分に近い価値観」のクライアントに当社を大きく強くさせてもらい感謝しています。
認知度も実績もない当社を選んでもらえた理由は「自分に近い価値観」以外にありません。

これを書いたのは当社の第6期が終了する間際です。今後、認知度も実績も大きくなったとしても「当社の自慢はクライアントです!」を変えません。コンサルティング業界では、マッキンゼーにいましたとか、会計士や税理士、有資格者がたくさんいますだとか、クライアント数が何百社だとかを強みにしている会社が多いです。しかし私の人生からはそこは重要だけど本質ではないと考えています。

ヤナセ時代を考えた時、お客様は外見から私の事をトップセールスだとは分かりませんし自分から言いません。また、過去に何百台キャデラックを売ってきたと言ったところでお客様の購入の意思決定には関係がないと思います。「自分に近い価値観」の方がより重要です。

現在進行形のコンサルタント時代を考えた時、有資格者の数やクライアント数よりも「自分に近い価値観」であるかどうかを大切にしているクライアントと上手くやってきました。もし仮に当社が有資格者やクライアント数を強みにでき、信じていることと違うことを強みにしたら、当社は三方のうちどれかが欠けている契約を締結することになり、「引取納車」で1日が終わってしまう、あの同期や先輩のようになると洞察しています。

だから「当社の自慢はクライアントです!」